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    盛子は上から見、下から見しながら、

    練吉の額は今青いと云ふより磁器のやうな冴えた白さに変つていた。目瞬きはぴつたりととまり、線を引いたやうな切れ目が深く長く、宛あたかも部厚い眼鏡そのものに入つたヒビ割れのやうに見えた。そして、

    この時さう云ひながら座に入つて来た者があつた。それは今泉だつた。

    と、相手は慌ててその筒抜けな声を庫裡の居間に向けて放つた。

    「大きいとも、こんなのを見たのは久し振りだ」

    「それをよこしたまへ。二足なんていらんよ」

    黒い影はぴよこりとお辞儀をした。それから台所から射す光りの中に全身を現すと、それを眩しがつているとも照れたとも見える表情を浮べながら近づいた。

    「さうですね。さつきからどうもさうらしいと思つていたんですが、失礼しました」

    房一はそれに目をとめていたが、急に強い口調で、

    きよろりとした眼でしきりと家の中をのぞきこみながら、しばらくして

    「何でもないぢやないかね、君から聞いたとほりだ。心配することはないと思ふな」

    「はあ、見て参ります」

    房一はこれまでにも河原町に帰つて一医者としての生涯を始めようと考へないでもなかつたが、老父の道平をはじめ伯父や身内の者すべてがさう希望していると知つたときに、唯々いゝとしてその云ふところにしたがふ気になつた。

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